視覚障害リハビリテーション

視覚障害の方々の中には、視覚に特に問題を感じないで生活を続けてきたのが、何らかの原因で、ある日突然、あるいは徐々に視力が低下して視覚障害となった、「中途視覚障害」と呼ばれる方々が比較的高い割合で存在しています。

私たちが生きていくのに必要な外界からの情報の8割から9割は、「視覚」から得られているといわれています。

そのような視覚からの情報が失われたり、不十分になったりすると、歩けない、読めない、一人で食事もできないなど、それまで当たり前に行っていた日常生活のいろいろな場面で支障が生じてきます。

そのため、中途視覚障害の方々の多くは、心理的に不安定な状態となり、「見えなければ何もできない」と、強い絶望感におそわれてしまいます。

このような状況にある視覚障害の方々が、以前の生活に近い、充実した生活を回復するために、「視覚障害リハビリテーション」というのが行われています。

「リハビリテーション」というと、「機能回復訓練」をイメージしがちですが、視覚障害に対するリハビリテーションでは、「機能」ではなくて「生活の能力」を回復することを目標にしています。

基本的な訓練としては、歩行訓練、コミュニケーション訓練、日常生活動作訓練などがあります。

「歩行訓練」は、移動に関する能力を回復するための訓練で、見える人と一緒に歩くときの安全な歩き方や、白杖や盲導犬などを利用した安全で確実な歩き方の訓練を通して、自分の行きたいと思うところへ自由に行けるようになるための訓練です。

「コミュニケーション訓練」は、読み書きに関する能力を回復するための訓練で、録音図書、点字、音声ワープロ、音声パソコン、拡大鏡や拡大レンズ、視覚障害者用拡大読書器などを利用して、必要な情報を自由に入手したり、発信したりできるようになるための訓練です。

「日常生活動作訓練」は、日常生活に必要な種々の動作(例えば、掃除、洗濯、料理など)に関する能力を回復するための訓練で、聴覚・触覚・嗅覚など視覚以外の感覚も利用して、これらの動作を安全で確実に行えるようになるための訓練です。

このような訓練を行っている施設や機関としては、これまでは福祉関係の施設や機関が中心だったのですが、最近では、特にロービジョンの方を対象に、医療機関の中にもこのような訓練の導入をしたり訓練そのものを行うところ、「ロービジョンクリニック」と呼ばれる機関が増えてきました。

inserted by FC2 system